都議会総務委員会傍聴記 2

5/6都議会総務委員会。 

報告事項(説明・質疑)
(1)「東京都青少年の健全な育成に関する条例の一部を改正する条例(案)」の都民などに対する説明について

青少年・治安対策本部
http://www.gikai.metro.tokyo.jp/schedule/general_affairs.html

今回は前回からこれまでの周知活動についての質疑。
共産古館理事から吉田理事へ交代の手続きのあと開会。
今回もあくまで不健全図書、インターネット(ケータイ)フィルタリング、ジュニアアイドル誌規制の3本柱についての議題です。ここでは不健全図書(いわゆる非実在青少年)についてのみピックアップしています。
[]内は私の感想・補足。

民主山口拓理事の質疑

山口:昭和39年制定、平成16改正以降漫画業界はどのように取り組んできたか
浅川:昭和39年の制定時、販売業者の自主規制で青少年に販売しないよう取り組んだ。平成16年の改正で、書店の自主規制と都の立ち入り調査が徹底されていなかったため、出版社に対し表示と自主規制を求めた
山口:今は現行条例で対応できない、青少年の健全な育成ができない状況が発生しているのか
浅川:従来の不健全指定基準「性的感情を著しく刺激する」では単に全裸や性交シーンがある程度では該当せず、性器描写の明確さや擬音、体液の描写の多さなどに依っている。この基準だと、子どもとの悪質な性交描写があるものは該当しない。[なんで?(揶揄でなく文字通りちょっと意味が分からなかった)]このため現状、子どもへの強姦が、楽しいこと、許されることのように描く漫画が青少年の手に取れる場所で売られている。このような図書は、読んだ児童の責任判断能力をゆがめる恐れがあり、新たに指定基準に追加したい。青少年に販売しないための仕組みについては変更はない。

山口:都が説明を行った出版倫理協議会は、第28期青少年問題協議会[?]においても、意見聴取が行われたとあるが、当時どのような意見が?
浅川:自主規制コードと都の条例を遵守する。不健全図書の冊数減に成果ありと。性表現にはある程度の規制があるのは仕方がないと。包括指定でなく個別指定である事も評価いただいている。悪質な本は出版倫理協議会に参加していない出版社が発行しているとも。
山口:その後は?懸念する意見はなかったのか?
浅川:漫画の中にも文学的なものもあり、ストーリーの流れの中で性を描いているものもある。青少年の性衝動は成長過程で必要なもので、封じ込めるべきではないという指摘。都からは、裸が描かれているから即規制するわけではないこと、低年齢向けの漫画にも性描写が増えている事実があることを回答。出版社側の自浄作用を生かし、規制を最小限にとの意見。都からは、これまで通り自主規制の努力を尊重すると回答。
山口:3/15、「東京都青少年健全育成条例の改正案に疑義・反対を表明する漫画作家有志および出版社」の意見書が発表された。また3/17、出版倫理協議会が「東京都青少年健全育成条例改正案に対する緊急反対声明」を公表した。出版倫理協議会が声明を出したという事は、出版業界全体が反対に回ったという事。元々は協力的な団体なのに。これについては?
浅川:真摯に受け止めるが誤解がある。説明につとめる。
山口:4/8説明したはず。この結果は?
浅川:意見書の内容は「18歳未満の架空の人物の性を描いたコミックへの規制により、当局の恣意的な判断を招き、作者や発行者への検閲や弾圧につながる恐れがある」ことについて問題視していた。これに対し都から「18歳未満とは明示的な描写で判断すること、表現規制でない事、児童ポルノ被害者が一生の被害にさらされていることから現存する児童ポルノを減らしていくべきであること[だから実在と非実在を混ぜるなよ]」を説明した。これへの反応は相手との合意により非公開。
山口:3/18(社)日本ペンクラブが「表現全体に影響を及ぼす」として「東 京都青少年条例改定による表現規制強化に反対する」声明を出している。
浅川:4/23理解を求める回答文書を送付した。現時点で特段の反応はない。
山口:ペンクラブは猪瀬副知事も会員だが。説明不足だ。[危険だなー説明すればいいのか。勝手に根回しされて条文に反映せず納得されても困るんですけど]
自分の所属団体を説得できないのなら他のどの団体に説明できるのか。
また(社)日本図書館協会が「東京都青少年の健全な育成に関する条例の一部を改正する条例」について(要請)」を出した。こちらについては?
浅川:要請文に対し説明&回答文書を提出した。それに対する反応はない。
山口:経産省には説明しないのか
浅川:これまで問い合わせはない
山口:(社)日本フランチャイズチェーン協会(コンビニの業界団体)へは?
浅川:新たに区分陳列となる図書について周知徹底につとめる
山口:ゲーム業界への対応が皆無のようだが
浅川:3/5コンピュータソフトウェア倫理機構(PC系の自主規制団体)へ説明。NPOコンピュータエンタテインメントレーティング機構、(社)コンピュータエンターテインメント協会(CECA)(コンシューマ系自主規制団体)からこれまで不断に反対意見をいただいているため説明にうかがっていない。これから周知につとめる。
山口:3月、都に寄せられた意見は3196件。そのうち1153件がこの件についてだった。これは異例の事態。
浅川:性交または性交類似行為のない漫画についてまで規制されるという謝った認識がインターネット上で流布していた。このような誤解をされるとは予想していなかった。このため説明を行った。
山口:それで都民の反応は変化したか?
浅川:4/26質問回答集アップロード以降、明らかな誤解にもとづく電話は減った。メールでは「本当に質問回答集どおりに運用されるのか信用できない」という内容が多い。
山口:説明を尽くしてから条例案を提出するべきだった。準備不足と考えている。返答のない団体が多い事も議論不足を表している。
(自民川井委員「議会をなんだと思ってるんだ、反対なら反対と言え」などと野次る。時間が押している事について?)

自民田中たけし副委員長の質疑

今回は「各団体への説明の報告に対する質疑」のはずだが、山口議員が条例案自体に質問をしたことに違和感を覚える。が、逆に、この条例が青少年を守る重要なものであると、改めて多くの都民にご理解いただけたものと前向きに受け止めている。[何でそうなる]
検閲ではない(川井「その通り!」)次代を担う子どものことよりも、どのようなものでも売れればいい、自分の利益を優先して、反対の行動に走るようなことがあってはならない。
石原知事からの意見は?
浅川:わかりやすい言葉での質問回答集の制作や、反対団体への説明を行っていくよう指示された。
田中:知事は芥川賞作家。創作活動の最大の理解者。その知事からの理解があった。[不発!民主共産生ネ失笑顔。釣りなら成功]
著名な漫画家への説明がなかったことが世の中に対して大きな誤解を与えるきっかけとなった。[漫画家へ対しての説明が不足していた→漫画家が反対会見をした→世の中に対して大きな誤解を与えたと言いたいらしいです。]これについて対応は?
浅川:竹宮恵子氏に対し、4/20に伺い説明。その内容については相手との同意にもとづきここでは言及しない。その他の漫画家に対しては調整中。
田中:努力は評価する。
多くの都民の方々にご理解いただいたと思っている
[この質疑中、生活者ネットワーク西崎委員が終始「馬鹿じゃねーの?」と言う顔。生ネの動向は個人的に注目してるのでここは一つ安心]

共産吉田信夫理事の質疑

(川井「純粋にさ、子どもを守ろうよ!」吉田「まあまあ、ここは私がしゃべる場なんですから」この後川井委員は吉田理事が古館理事の後任であることを受けて「新米だからね、分かってない」「全然引きつぎできてないじゃないか」など質疑を吉田理事の無理解にすり替える野次を終始飛ばし続ける。)
吉田:説明が必要
浅川:説明していきます
吉田:改正案提案後に説明するという姿勢では理解を得られない。上記の各団体、多くの作家、個人から反対意見が表明されている。合意が得られていない。ペンクラブは声明で

表現に関わる規制強化という重大さに比して拙速に事が運ばれている

日本ペンクラブ声明 東京都青少年条例改定による表現規制強化に反対する

と言っているが、それに対し都の回答は「拙速な印象」に対し全く否定し、反省が見られない。各団体・個人から反対の替えがあがる事態をどう認識しているのか。この現状を拙速ではないなどと言い切れるのか。
浅川:20年−22年答申[聞き取れず]にもとづいている。素案作成の段階でパブコメも行っている。これにもとづき改正案に反映し、充分に都民の理解を得た上で提案している。
吉田:手続きは整えたというお答えだと思うが、現実にこれだけ反対意見が出ている。パブコメの全容が明らかでないが、反対も多かったのではないか?
山口知事の質問でペンクラブの話が出たが、正確には知事も会員で、副知事にいたっては理事である。その団体が反対している条例をそのまま進めるのか。
また、3/19の都知事記者会見にて、知事が

これ、私もちょっとまだ精読してないというか、詳細に考えていない
http://www.metro.tokyo.jp/GOVERNOR/KAIKEN/kako22.htm

と言っている。提案者の知事自身が精読せず、理解しないまま決定[?聞き取れず]した。拙速中の拙速ではないか。また

あんまり拙速にすることはないと私は思います。

とも言っている。

浅川:知事が「精読していない」と言っているのは条例案文自体の事
吉田:それが問題じゃないですか(苦笑)
浅川:知事は一語一語チェックするということではない。我々が、条例においてこんなことをしていると的確に知事に伝え、知事は理解した上で今回改正案を決定[?]している。[これは嘘。この記者会見最後に一瞬流行った「私は、表現というのか、口頭じゃなくて、こういうものがありますって、やっぱり直に見てみたいんです。それ、買いに行くのは気が引けるから、君、ぜひ、おれに届けてくれよ。」と言う発言がある。知事は条例案の詳細どころか副資料も見ていない)]

吉田:国の法改正に伴う条例改正の場合などはそれでいいのだろうが、影響が重大かつ表現の自由に関わる問題について、知事が精読しないでよしと言うことは都民は納得できない。私もびっくりしましたよ。
質問回答集の12http://www.metro.tokyo.jp/INET/OSHIRASE/2010/04/20k4q500.htmにこうある。

現在の「著しく性的感情を刺激する」という指定基準を当てはめればよいのではないですか?

この問いに対し、回答は

これまでの業界との共通了解を勝手に都が変更し、解釈を拡大することは、それこそが「行政の恣意的な運用」「規定の濫用」になると考えるからです。

それならば、それこそ条例改正案提出前に合意を得なければ。
浅川:出版倫理協議会とは話し合ってきた
吉田:説明をしていますしていますと繰り返し述べられるが、「反対を表明した団体は、要は不理解なんだ」という態度。条例案への意見や要望を聞くという努力が見られないが。
浅川:出版社はその立場から意見があるだろうが、現に青少年を悪質な性交の対象にする描写のある出版物がある。
吉田:あくまで意見は求めないと。3/19知事会見でも

記者:規制の基準があいまいだというところが、皆さん、危惧を抱いているところだと思うんですけども、そういったところをもう一遍詰め直すというような考え方で?
知事:そうですね。それは好ましいと思います。

と答弁しているが。
浅川:誤解を払拭するための努力を鋭意行っている。
吉田:知事答弁と合っていない。いったん撤回して業界団体に理解を求めるべき。[今回はじめて撤回の言葉が出たが…]
今後どのような団体にどう対応するのか
浅川:一般都民へは、質問回答集の追加。漫画家へは説明の調整中。業界へは打ち合わせをしていく。
吉田:例えば開かれた場でフリーに意見交換するべきでは?
(川井:共産党は何やったって反対なんでしょどうせ!)
浅川:特に考えていない
吉田:条例案の文言については次回質問するが[そう今回はそこは議題じゃないのでした]ひとつだけ。質問回答集について、条例のどの文言によってその回答が成り立つのか不明瞭。[ここがポイントなんじゃないの?]
ペンクラブへの回答や質問回答集の6では、18歳未満でもって規制するのでなく

正当な理由なく、読者の性的好奇心を満たすことを目的として、不当に賛美したり強調したりしたものに限定しています。

となっている。また、同じく質問回答集の6で

いわゆる「エロ漫画」のうち、子供との 性行為の描写がメインとなっているもの

と回答。さらに4では

性交を示唆するにとどまる描写(裸の二人が折り重な っているなど)は該当しません。

と回答。一方7条二では

みだりに性的対象として肯定的に描写すること
http://www.seisyounen-chian.metro.tokyo.jp/seisyounen/pdf/.../sinkyuutaisyou.pdf

というのが条例上の文言。これが回答集の「不当に賛美強調」や「性行為の描写がメイン」と解釈されるのか。きわめて曖昧。
浅川:[ここは非常に重要な答弁だが、川井委員の野次がひどくて聞き取れなかった。吉田理事も聞こえないと言っていた。もっとも議題を逸脱しているので強く言えなかった感じ]「肯定的に」とは、子どもを性的対象として描き、子どもが大人との性交を喜び、誘っているシーンを肯定的に描くという描写を「賛美」と言っている。[だからなんでそういう解釈になるのかという質問なんだが。回答になってない]
吉田:解釈に幅が生じる。質問回答集10は

条文で、「みだりに」「性的対象として」「肯定的に」などと言っていますが、非常にあいまいではないですか?

というもっともな質問だが、回答がひどい。

いわゆる「エロ漫画」と呼ばれるもののことです。

などと言われても、私には分からない。ストーリー性が低くともあるが、それは主観による。今までもこのような判断をしてきたのか。現実そんな運用ができるのか。
浅川:例えば「著しく性的感情を刺激する」図書類の場合、描写の程度、性器描写の多さ・直裁さ、擬音や体液の描写に加え、当該箇所の量、当該シーンを描いている目的などを総合的に勘案している。
吉田:ストーリー性については回答いただいているのかな…(苦笑)[回答してませんね]
きわめて抽象的。表現する側から見てどうしたらいいのか分からない。
表現規制ではない、大人への販売を規制しない」というが、作家から見て、高校生のセックスを描いた漫画を一般に発表できるのか、それとも成人向けに追いやられるのか。それは大きな問題ではないか。
浅川:きわめて悪質なものを18歳未満に販売しないというだけだ。憲法21条に反していない
吉田:作家に心理的影響を与える。作家からの手紙を紹介する。

中学生の男女の成長を描いた漫画を連載していますが、クライマックスとして、力合わせて性交することが構想段階から予定されています。しかし、条例案を見て、この物語を描き切る仕事が果たせなくなるのではないかと、大変な危機感を感じました。そして私は自著で、青少年をみだりに性的対象として扱っているつもりは断固としてありません。むしろ、正しい彼らの姿を描くことでしか、成長過程の不安定な時期を過ごしている少年少女への手助けになることはできないと思いながら、日々作品を描いております。*1

このような手紙が来ている。心理的な圧迫が現実に作家に及んでいる。大人向けのコーナーで売ればいいじゃないかという問題なのか。
浅川:質問回答集10にあるとおり、ストーリー性の高いものは当たらない。その判断は、青少年…委員会[ききとれず]および第三者の意見を加え、慎重に判断する。
吉田:前回総務委員会で、古館委員が学問的知見について質問し、参事は「現在見いだせていない」とおっしゃった。学問的知見もなしに進めるのも拙速ではないか。その後、学問的知見は出たのか。
浅川:学問的知見はないが、知見が得られるまでは子どもが大人と性交を喜ぶ漫画を売っていい事にはならない。
吉田:拙速。撤回すべき。



質疑は以上。次回参考人を招致する事を合意して終了。[宮台真司氏が打診を受けたことを表明されているが、あとの3人は誰なのかな?]

経過報告の回なので仕方ないのだが、問題を業界・ユーザーへの周知不足とするのは筋が悪い。非常に不安。

*1:
陳情書は信書でないと考え、アップしました。問題あればこの作家の方、ご連絡ください。第三者からの指示は不要です