都議会総務委員会傍聴記3ー1 参考人赤枝恒雄氏の意見聴取

5/18都議会総務委員会。 

付託議案審査(参考人からの意見聴取)

青少年・治安対策本部
http://www.gikai.metro.tokyo.jp/schedule/general_affairs.html

参考人意見聴取のうち、まずは赤枝恒雄氏の分をまとめます。
今回もあくまで不健全図書、インターネット(ケータイ)フィルタリング、ジュニアアイドル誌規制の3本柱についての議題です*1。ここでは不健全図書(いわゆる非実在青少年)についてのみピックアップしています。
[]内は私の感想・補足。ただし今回は青字少なめです。これまでは、理屈の通らない部分には青字で突っ込みを入れていましたが、参考人意見という事情を考えそれはしていません。都議員対都であれば、質問の答弁は論理に沿ったものであるべきですが、赤枝氏は他分野から招致しているので、状況を把握しない発言が多いのも、流れを無視して自説をぶっこいてしまうのもある程度仕方がないからです。同じ理由で質問と答の対応がむちゃくちゃな部分が多々ありますが、そのままにしています。

参考人プレゼンテーション[順序をいじっています]

昭和52年から産婦人科をやっている。11年前「街角相談室」を開設。子どもの性の危険さを見て「ガールズガード」運動をやっている。


子どもの性に関して、他分野の人と意見が噛み合わない。現場を見てくれていない。六本木の深夜は黒人と少女が戯れている。少女はひどい雑誌を「家にもって帰れない」と自分のもとに置いていく。六本木のドンキホーテには3本1000円でレイプビデオが売っている。それらはすべて「レイプされた女性は最終的には喜ぶ」と言う内容である。表現の詳しい部分というより、子どもに過激なものを見せたくない。


とにかく現場を見ろと言いたい。性表現の話になると性教育は家庭でやるべき」「法律で規制するな」という意見を耳にするが、現実を見ているのか。現状、子どもはセックスは面白い、気持ちいい、楽しいとしか思っておらず、リスクの知識は皆無。レディコミ、アダルトビデオをまず見てほしい。描写がひどい。3Pなど、常識ではあり得ないようなセックスを扱っている。66%の子がこれを真似する/真似したい[数値で言っているところからアンケートをしたと思われる]。「性的フィクションで真似をしたくなるというのは嘘」は嘘。


少女の20%は彼からレイプされている。睡眠薬を飲まされて目覚めたらレイプされていたとか、汚いタトゥを入れられていたとか。でも大人に相談できない。特に親には言えない。親に知られたら一切外出させてもらえなくなるからだ。少女達にとってレイプ被害より、外で遊べなくなることの方がリスクが大きいのだ。「日本はレイプが少ない」という言説は嘘。


性表現物にコンドームの表現はない。
六本木の少女はたいてい性感染症にかかっている。都内9校で「おりもの検査」をしたところ、232人が性感染症だった。これはフリーターと同率の感染率だ。また、全国で尿検査をやっている。クラミジアの感染が目立つ。自覚症状はないが、クラミジア感染は不妊や新生児の奇形、AIDS感染リスクの増大を引き起こす。それでも、少女の妊娠・中絶・性感染症は(私が活動している)東京はまだマシな方だ。健全な遊び場があるからだろう。


13歳以上の児童には性的自己決定権があるなどと言われているが、13歳以前に子どもに何か教えたか?「14才の母」などというTVドラマが放映されるような世相。13歳以前のセックスが普通であると言うことがまかり通っている。


リテラシーを育てるためには規制をするべきでない」という意見もあるが、そんなことはない。私は学習院付属小学校で性教育の講演をしていたことがあるが、ショックのあまり倒れる男の子がいる。性の発達は個人差が大きい。年齢で一緒くたに教えると危険。だから規制も必要なのだ。


性表現物の年齢制限をお願いしたい。

山口拓(民主)理事質疑

山口:厚労省の定点観測によると性感染症は増えていないが
赤枝:インフルエンザと違って子どもが親に保険証を借りられないため病院に行けない。したがって定点観測では議論できない。我々がやっている無料検査でやっとデータが出る。


山口:お話の通り、東京に限った話ではない。なぜ東京で都条例を改正せねばならないのか。
赤枝:AIDSは60〜70%が東京で出ている。それは地方から東京に来て発見されているからだ。地方のほうが性の乱れはひどいかもしれない[それだと山口議員の疑念を補強する回答だね。都でやることじゃない]。東京でこういう条例案が出たのは喜ばしいことだ。


山口:インターネットでの性情報はどうか
赤枝:インターネットでどこでも情報がとれる。またGPS機能をオフにしているようだ。インターネットの知識で、子どもは親の裏をかいている。性情報に地方格差はない。


山口:では性知識を別のところから得ているのでは?[すみません、cuervoが流れを見失いました]
赤枝:ネットが1位。地域格差はない。


山口:性の発達度は年齢で一緒くたにできないというお話を詳しくうかがいたい。先生のご意見では何歳からなら性表現に触れてもいいとお考えか。
赤枝:知識のない子どもがいきなり知識を得たらどうなるだろう? 私は18歳で大学の先輩に男女のまぐわう写真を見せられ、2、3ヶ月頭がぼーっとしてしまった。過激な性描写で性そのものが曲げられてしまう。性表現物は面白さが先行。愛の形という考えはない。女性の結婚可能年齢=16歳からは見てもよいというのが私の見解。12、3際でリテラシーができているわけがない。では義務教育に「正しいポルノの見方」という課程を加えるのか? 問題にならない。


山口:今までのお話からも、東京のみならず全国的に議論をしていく問題だと受け取った。年齢に関してももっと議論が必要だ。
さて、家で性教育ができないとのことだが、どういうことなのか。詳しくうかがいたい。
赤枝:急ぐ問題なのだ。私も20数年前から性教育の指導者を育てているが、進展がない。待てない問題なのだ。議論している場合ではない。「16歳までセックスしない」という指針が欲しい。学校でも児童の自主性・権利を侵害しないために教師が何も言えない状況がある。法律があれば指導の根拠になる。

小林健二(公明)委員質疑

小林:クラミジアがCoolという流行が児童の間にあるようだ。人パピローマウィルスも蔓延している。現在子どもは正しい性知識を持っているのか? まして強姦など、あっていいことではない。
さて、アダルトビデオは18禁だが子どもが手に取れるというお話があった。ではマンガはどうか?アダルトビデオよりひどいのでは?
赤枝:女の子はアダルトビデオよりマンガを持っている。家に持ち帰れないものを私たちのもとに置いていく。この問題に関わる人はマンガを見ているのか。観念的に表現の自由などと論じても意味がない。ああいうのは、悪書じゃないんですか? ああいうもので刺激を受けて女の子が被害者になる。男の子が女の子にセックスを強要する口説き文句で非常に多いのが「お前、俺を愛してないのか?」というセリフ。これはマンガの影響なのでは? アダルトビデオが性の資料になっている。一定年齢まで規制してほしい。


小林:今回の改正案は区分陳列の条例案なのだが、効果についてどうお考えか。
赤枝:アダルトビデオにはビデ倫があるらしいが、レイプものがドンキに売っているという現状がある。それでも条例は進歩だと思いますよ。女の子には恋愛したくないという子も多いのだが、その理由に「彼氏がAVを見せてくる」「彼氏がAVを真似したセックスを強要する」というのがある。条例の効果は別として、女の子が、自分を守る法律があると分かるだけでも進歩だ。


小林:抑止効果があるということですね。この問題はまだまだ途上の運動であると思うが[質問が抽象的でメモしきれなかった。雑談?]
赤枝:援交をなくすには大人を逮捕すること。ラブホテルに私服(警官)が張っていればいいことだ。大人に厳罰を。


小林:性教育について学校などではどう取り組むべきか。
赤枝:小学校で性交の映像を見せるのはダメ。それは中学から。小学校では個人間の格差が大きく、トラウマになる子が出る。小学校でできることは、男の子に対して「女の子ってすごいよね」「男の子も女の子から生まれたんだよ」「子宮は大事なんだよ」「子宮は清潔にしなければいけないんだ」と教えていくのみ。


小林:行政の役割は。
赤枝:規則がないと子どもには分からない。今言ったように小中では教えない。家庭でも教えない。教えられないと親が言う。学校で性教育をした場合、単語が一人歩きするのが怖い。例えば以下のようなことになる。

学校: 性教育の中でフェラチオを扱う
子ども:「ふぇらちお!ふぇらちお!」連呼
親:  「どこでそんな言葉覚えたの!」
子ども:「がっこおー」
親:  教育委員会に通報
教育委:「君困るじゃないか」
→教師処分

(どこでも教えられない以上)ぜひ法律での規制をお願いしたい

吉田信夫理事(共産)質疑

吉田:著書読みました。子どもの性的自己決定能力を高めていこうという議論についてお考えを。ご著書ではメディアリテラシーを強調されていたようだが。
赤枝:子どもの性的自己決定能力を高めることについては原則同感なのだが、現場を見てほしい。性教育が皆無。性的自己決定能力が芽生えてくるのは16歳からだが、16歳には何の知識もない。


吉田:性教育が重要ということですね。個人差、成長段階いろいろな中でどう教えていくべきなのか。都立七尾養護学校性教育弾圧もあったが。[参考http://kokokara.org/ ]
赤枝:家庭でも学校でも無理。今私はPTA、学校からの講演依頼を断っている。子どもに直に教えるしかない。小学校では女性への尊敬と子宮の尊重を教える。中学校で性交教育を始める。5人ずつの少人数制で目を見て教え、倒れそうな子、ついてこられない子は別メニューにしてあげるなど、個人個人に対してメニューを決めていく。


吉田:ご著書に「それでも子ども達に可能性はある」とあるが、子どもが自己肯定できる社会環境が必要なのかなと感じた。著書のまとめに「メディア関係者は青少年を消費者として見るのではなく、教えていく存在として[うろおぼえ]見ていってほしい」とあるが、これを規制で求めていくのは容易でない。メディアと合意を得ていくことも必要では。
赤枝:メディアとの話し合いが必要なのは同意。子どもはみんないい子。髪を立て、鎖をじゃらじゃらさせ、恐ろしい外見の子でもお手伝いをさせると喜んで働くし、優しい。

西崎光子(生活者ネットワーク)委員質疑

西崎:私も望まない妊娠について議会で取りあげてきた。東京で中絶が少ない理由に健全な遊び場が多いとおっしゃっていたが、詳しくおうかがいしたい。
赤枝:地方は終電が早く、電車がなくなると「友達の家に泊まる」と電話で親に連絡する。それを親が許すという状況がある。
西崎:中高生の居場所が東京にはあると?
赤枝:子どもの居場所は家庭。親の「勉強しろ」という言葉は「あっち行け」と言う意味だ。親が子どもに関わるべき。お手伝いをさせてお礼を言えば、家に子どもの居場所ができる。子どもに「ありがとう」と言っていこう。


西崎:あに出版[?]で、性教育を学校で進めようと言う運動をしている。教育委員会と話すがすれ違い続けている。発達状態によっても教育内容を変えていくべきなのですね。
赤枝:1つ1つの区に性教育の専門家を定めた。各高校で使ってください。教育委員会にリストを回します。また、うちの産婦人科で「性教育を引き受けます」という外来をやっている。¥15,000/時間。補助金が出なければやっていけないが…。


以上です。お分かりの通り、赤枝氏が再三口に出すのはアダルトビデオとレディコミであって、今回の改正案とは範囲違い。今回の条例改正案では彼の活動の助けには全くなりません。ちょっと探した限りでは赤枝氏が青少協などに関わっている記述が探せませんでした(違ってたらごめんなさい)。中の人でないのだとすれば、赤枝氏が条例改正案について精読する筋合いはないのであって、的外れな答弁を責められることではありません。憶測ですが「青少年を守る制度を作るのでご意見ください」程度のオファーだったのではないかと思います。善意の関係ない人を巻き込んだ参考人招致ではないかなあ。

*1:ただし今回ジュニアアイドルについては意見なし。