都議会総務委員会傍聴記3ー4 参考人前田雅英氏の意見聴取

5/18都議会総務委員会。

付託議案審査(参考人からの意見聴取)


参考人意見聴取のうち、前田雅英(第28期青少協専門部会長 / 首都大学東京法科大学院教授)の分をまとめます。今回もあくまで不健全図書、インターネット(ケータイ)フィルタリング、ジュニアアイドル誌規制の3本柱についての議題です。ただしこの質疑においてはインターネット、ジュニアアイドルについては意見なし。
[]内は私の感想・補足。

参考人プレゼンテーション

(都職員に会釈、親しそうな感じ。都職員は中腰になって会釈。立っちゃいけない場面で偉い人にあったとき挨拶するあの感じです。)


なぜ世論に誤解が生じたのか?これだけ議論が出るとは意外だった。他にも明確でない法案はあって、すべて通っているのに[ちょっとちょっと!]。規制という言葉が議論を呼んだのか。区分陳列のみなのに。規制VS表現の自由の歴史においては、最高裁判決で、「表現は家庭ににおいて誰でも見られるものでなければならない」という判例が出ている。それでは厳しすぎるだろうということで都ではむしろ緩和している。欧米では子供が見られる表現物は(全体の中で)かなり少ない。


青少協にPTAから「こんなマンガを書店に置いておくのはおぞましいんだ」という声がきている。パブコメも参考にした。その中には大人も読めなくしてほしいという声もあったが、青少年保護育成条例ということでそれは入れなかった。


都民は改正案に本当に反対しているのか。子供の手の届かないところに置いてくださいというだけのことなのだが。
「グレーゾーンはどうするのか」と言う作り手の声は分かるが。「ゾーニングしたら売り上げが減る」?それは否定できない[前者はともかく後者で規制に反対している人いましたっけ?]。まあ都がこの程度のゾーニングだったらいいだろうということでやっている。
非存在青少年について。日本語として違和感がある。いい言葉があれば変えていきたいが、他の条文でも難しい言葉は多々ある。法文はそういうもの。そう変とも思わない。
科学的知見については、刑罰のための条文ではないので、立法事実は必要ない。他の法律や死刑制度にだって根拠はない。


規制しない場合、被害が起こったら誰が責任を取るのか。
どこの国でも幼児が性的快感を得ているようなマンガは悪とされている。

浅野克彦委員(民主)の質疑

浅野:誤解は漫画家の記者会見が大きかったと思うが、事前に漫画家から意見を聞いたのか[誤解になっちゃったのかー、浅野さんトーンダウンしちゃったな]
前田:おっしゃる通り(漫画家の記者会見が大きかった)。出版倫理関係を出版の代表者として扱っていた。その時点ではマンガが改正の中心となる予定ではなかった。


浅野:進め方が悪かったということか。また、児ポ法との関わりについてうかがいたい
前田:低年齢のものに対してもやっていかなくちゃならない。それだけ。[ちょっと流れが読めていません…]


浅野:第七条

二 年齢又は服装、所持品、学年、背景その他の人の年齢を想起させる事項の表示又は音声による描写から十八歳未満として表現されていると認識されるもの(以下「非実在青少年」という。)を相手方とする又は非実在青少年による性交又は性交類似行為に係る非実在青少年の姿態を視覚により認識することができる方法でみだりに性的対象として肯定的に描写することにより、青少年の性に関する健全な判断能力の形成を阻害し、青少年の健全な成長を阻害するおそれがあるもの

に「青少年の性に関する健全な判断能力の形成を阻害し、青少年の健全な成長を阻害するおそれがあるもの」とあるが、逆に望ましいものとは?
前田:誤った男女観がないもの[誤った…それを行政が定義するわけですか]、幼児の性愛がないものだ。有識者が集まって議論した。


浅野:例えば「女子高生のコブプレをした熟女」(のマンガキャラクター)は規制対象に入るかと聞いたら、入らないということだった。非常にわかりづらい。都知事

【記者】今のに関連しまして、知事もちょっとわかりにくい表現があるということをおっしゃいましたけれども、そういった表現を若干修正してというこ とは、検討されてないということですか。
【知事】そうですね。修正したらいいですよ。誤解を受けるような、訳の分からない、「非実在青少年」なんて、誰がどう解釈しても、幽霊の話かと思っ ちゃう、本当に。描かれたものっていうことなのだから、そういうふうにそれを書けばいいんだよ。
【記者】それは、前の一定で出したのをそのまま、二定でも検討するのではなくて、都側もそういった文言を若干修正して。
【知事】そうです、どんどん変えたらよろしいと思う。誤解を受けているのだったら、誤解解くために、文言が悪いのだから、文言を修正したらいいじゃ ないですか。特に役人がつくる言葉なんていうのは、くだらない、常套語(じょうとうご)があって、世間に通用しないこといっぱいある。僕なんか読んでて分 からない。「これ、どういう意味?」ってよく聞くんだ。はい。

石原知事定例記者会見 平成22(2010)年5月7日(金)

ということで、「分かりづらかったら条文を変えればいい」と言っている。条文を変える計画はあるか?
前田:条文作成に私は関与していないが、必要ないと考える。運用に際してのガイドラインは必要だ。

田中たけし副委員長(自民)の質疑

田中:誤解にもとづく反対があったが今は理解されている[反対意見はもう存在しないそうです]条例の本質でない一部とか、限定的な状況、あり得ない状況についてあげつらう木を見て森を見ない議論がある。本質をゆがめ、恣意的に運用するような余地はあるのか。
前田:法律はどんなに厳格に作っても悪用されるものだ。他のものに比べて不明確かというとそうでもない。ここで議論されたことはガイドラインに反映していけばいいのであって、無駄ではなかったとは思う


田中:「非実在青少年」という言葉も今や多くの人が理解できる文言となった。今回の議論で多くの人に発信できたのではないか[いや言葉の意味を把握したのと賛成するのと違いますから。それは「理解」という言葉の都合いい解釈]
前田:分かりづらい表現と漫画家へのリサーチ不足については申し訳なかった。しかしここまできて改正案を止めるのかという都民の声がある[どこに?]


田中:改正案は抑止力になるという赤枝氏のお話があった。審議が遅れる、あるいは廃案になった場合のダメージは?
前田:急に大きなダメージということはないと思う。が、ゾーニングのみだということで都民の大方の同意は得られている以上、文言レベルのことでモメて遅れることは、都民からの信頼に影響が出る。そちらのほうが問題だ。

小林健二委員(公明)の質疑

小林:なぜ誤解が生じたのか。条文が難しすぎる。宮台氏によると「法律は条文がすべて」とのことだ。誤解の生じる可能性のある条文についてどうお考えか
前田:法律の専門家から言うと、解釈の余地のない法律を作ることは不可能。解釈の余地のない法律は素人の考えだ。でないと法解釈で食っている私のような者がいる説明がつかない。解釈が国民[都民?]の同意・常識から乖離しないようにガイドラインを作る必要はある。条文でがんじがらめにして何年も運用できるものではない。解釈を重ね、違憲審査も入れながら動体[動態?]としてまわしていくのが法律。その際メディアからのチェックも大切。


吉田信夫理事(共産)の質疑

吉田:規制の曖昧さはあるのか?「みだりに」「肯定的」は曖昧か?曖昧でないか?曖昧であっても刑罰規定でないので問題ないのか?第七条二 自粛しなければならなくなるのかどうか、これは大きい。
前田:淫行処罰の曖昧さでも合憲とされている。そのバランスを考えると、文言は多少曖昧かもしれないが、法的には明確だ。
作家については描いてはいけないとは言っていない


吉田:理解できない。そうならば「みだりに」「肯定的」かどうかはどう区別するのか。あくまでも刑罰でなく区分のみと言うことだが、心理的影響についてのお考えは?
第九条二は版元へのペナルティという新たな領域に踏み込んでいるが?
前田:漫画家に対しては反省している。「こういうものは子供に見せられない」という思いのみで動いてしまって、制作の苦労に思い至らなかった[これは嘘であることが分かっています。第28期東京都青少年問題協議会第8回専門部会において前田氏自身が「これは漫画家集団の虎のしっぽを踏む行為ですから、これは大変慎重にやらないといけない。」と言っている。http://www.seisyounen-chian.metro.tokyo.jp/seisyounen/pdf/09_singi/28b8giji.pdf ]
「みだりに」と「肯定的」と言う言葉が区別できないということだが、法律の世界はみんなそう。例えば「故なく」と言う言葉など。具体例で決めていくしかない。髪を1本抜いたら無罪だが、10、000本抜いたら傷害罪だ。では888本だったら?
(吉田理事苦笑「そういう意味で聞いたんじゃない」)基準は具体例をだんだん積み上げていくしかない。[九条についての回答なし。吉田理事の癖で、複数の質問をまとめてするのだが、回答側は都合の悪い質問に答えないことができる]


吉田:立法事実の件。学問的知見すなわち立法事実とまでは言えないと思うが、七条についての立法事実はあるのか、ないのか、必要ないのか
前田:立法事実って…(苦笑)。「立法せざるを得ない社会的事実があるかどうか」が正しい。青少協答申では立法をしたわけではないので。しかし、父母からの「こういうのはまずいんじゃないですか」という声が出た。これをもって立法事実とできるだろう。


西崎光子委員(生活者ネットワーク)の質疑

西崎:「効果が分かっていてやる条例はない」とのことだが、では何の意味があるのか。
前田:死刑で犯罪が抑止できると証明されていない。しかし死刑は存在している。[じっさい諸外国から批判されてんじゃん]効果が具体的科学的に証明されなければ立法できないということではない[だから好き勝手に立法してよいともとれるぞ、それは]


西崎:都民感覚から離れたところで立法されるべきではない。一度立法されれば必ず一人歩きする。ハブコメ←反対多数、PTA←意見を聞いていない。私たちも聞いていない。ボトムアップで希望があったのか。
前田:青少協の委員には都議会議員も入っているんですよ? 選挙で選ばれた都の代表だ。[開き直りだがまあ正論。都民のチェック不足は反省せねば]裁判員裁判も導入されたことだし、法文がどうのこうのだけですまなくなってきている。国民の常識が大事という気運[その常識に根拠がないという質問だが]。ただ今回話し合いが足りなかったのは事実で、反省したい。


西崎:児童ポルノ関係盛り込みについては。都のみの問題ではないので、国の議論を待つべきでは。
前田:児童ポルノ盛り込み?そんな条文はない。児ポ法と勘違いしているのでは?本状例ではゾーニングにとどめる、押さえた条文になっている。[ここ多分、西崎委員が単純所持のことを言いたかったのを言い間違えたのではないか。]


西崎:上から目線で悪い者を取り除いていこうという条文で、これは治安条例。どのように子供を救済していくのかという条文がない。
前田:子供目線というのは実際には難しい。子供を守る目線ということで、父兄の意見を入れた。


民主浅野委員はぐっとトーンダウン。失望しました。本当に都民の意見を入れたのかという質問はいくつかあったが、のらりくらりと逃げられた印象です。以上です。