ノリーのおわらない物語

ノリーのおわらない物語

ノリーのおわらない物語

ニコルソン・ベイカーの小説を嫌う人はいないと思う。
何しろ、思想もなければストーリーもない。キャラクターさえないのだ。あるのは描写だけ。人によって好き嫌いの分かれる要素がない。だから何も残らない(それがいい!)が、読んでいる間はだれでも楽しい時間を過ごせるはず。

ところが、この人ほど他人に勧めづらい作家もいない。
「牛乳パックの注ぎ口を讃える小説だよ」「時間を止めて、いい女の足元にエロ小説を書いて埋めておく話だよ」「テレホンセックスの本だよ」……orz。説明不能

だがしかし。今回はお勧めしやすいなー。テーマは子どもの日常!なるほどぴったり。9歳の女の子というのは、ちまちまちまちま、もうディテールだけで生きている存在だ。それを余すところなく描けている。「層が好き!」とか、グロいの嫌いなくせにそればっか考えてるとか、だれが好きかを隠すのに命かけるとか、微苦笑しまくり。「可愛い子どもモノ」に反感持ってる方にもお勧め。あまりにリアルすぎて、可愛い可愛くないの問題は超えている。いじめというちょっとドラマチックなエピソードも出てはくるが、特に解決しないのも○。

これを読んで面白いなーと思った方は、ほかのベイカー作品も読んでみて欲しい。超能力者が時間を止めて痴漢しまくる話でも、面白さのツボは同じ。テーマはポイントではないのです。