野阿梓『兇天使』(復刊版)

兇天使 (ハヤカワ文庫JA)

兇天使 (ハヤカワ文庫JA)

本屋を通りかかったらあったので、買ってきた。解説を読むまで寡聞にして知らなかったのだが、この10年『兇天使』は品切れだったのだそうだ。
ばっっっなにやってんだよ早川! 『兇天使』のコンスタントな供給は会社の義務だろうが! ここんとこhttp://www.hayakawa-online.co.jp/info/company.htmlに社是として明記しとかなきゃなんない事だぞ! 86年以前の日本の全ての耽美少女マンガ、幻想文学、ファンタジーワイドスクリーン・バロック*1はすべて『兇天使』を生み出すために存在したのだし、これ以後はこれらの分野にちょっとでも興味があるならば、必ず教養として読んでおかねばならない、そういう世に出た瞬間に古典になっている本作をだなあ(ゼエゼエ)。

おもいだすなあ。これを読んだ後の悲しみを。今後少なくとも10年、これ以上の読書体験ができない事が確定されてしまった読者としての自分の不幸、そしてデビュー3年目にして最高傑作が確定されてしまった作家の不幸をおもって涙したものですよ当時。

にしてもつっまんねー装丁だな今回は。なんであの超絶美麗かつ骨太な萩尾望都の挿画をそのまま使わないんだろう。挿絵もないし。バカじゃねーの。黒の革スーツに身を包んだ金髪の上級天使がホンダにうち跨がって時空を翔けめぐる話ですよ? 漫画の方が名画より価値が低いなんて考えの人間はどのみちついてこられないんだから、フォローしないでいいんだよ。まあなんにせよ本屋に行けば日本SF史に冠たるこの大作が買えるというまっこと健全な状況になった事を喜ぶべきでありましょう。

*1:というとほんの数作になってしまうが