魔法使いハウルと火の悪魔
ハウルの動く城1 魔法使いハウルと火の悪魔 (ハウルの動く城 1)
- 作者: ダイアナ・ウィンジョーンズ,佐竹美保,西村醇子
- 出版社/メーカー: 徳間書店
- 発売日: 1997/05/01
- メディア: 単行本
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冒頭からつかむつかむ。主人公が城に到達するまでが最高におもしろい。ここだけで、書店の「女性・エッセイ」コーナーにあるピンク色っぽい本100冊読むより女の子の生き方に役に立つ*1。
しかしその後……ジョーンズってどうも話がとっちらかってしまうような。テクニカルに入り組んだ物語運びなのだろうが、読者としては既にパワフルな主人公に感情移入して突っ走る体勢ができてるので、ちと読みづらい。作者がトールキンの弟子であることが関係しているのだろうか。
でも充分、キャラで読ませます。
主人公はいつものジョーンズのヒロイン。「やけくそ状態の知的な女の子」。チャンスをもぎ取り、生き延びるんだ!一方ハウルは、女の子による女の子のための萌えキャラ。チャラ男でギークという最悪の組み合わせだが、ゲットする対象として可愛い。
分からなかったのは、世界がこちら側に破れている点。
ファンタジーを
と分けた場合、現実世界の影を出すことが許されるのは前者のみ。後者に出してはいかん。比喩の構造が崩れる。
ところがこの作品は明らかに後者。登場人物は完全に現代人。同じような人間的存在がいるウェールズを出してもなあ。もしや
という対比なんだろうか。自分で言っててピンとこないが……。
まあ疑問はあるが、女性が読んで楽しいことは確か。フェミニズム小説であるところの本書を、宮崎駿監督がどう料理するか見もの。
*1:ただ、「長女」はぜひとも「姉むすめ」と訳して欲しかった。悪逆非道かつラストでコテンパンにやられる昔ばなしの長女はやっぱり「姉むすめ」でなくちゃ。