パターン・レコグニション

パターン・レコグニション

パターン・レコグニション

去年SFをお休みしていた間に出ていたウィリアム・ギブスンの最新作*1
もう「予感に駆られて動く男女の複数視点でもったいぶった話が展開して、彼らが遂に出会ったところで唐突に終わるパターンは嫌よ」と思っていたら、ごくごくオーソドックスな構成の小説だった。これはこれで食い足りないなあ。
デビュー当時から、ベタなハードボイルドへの志向が言及されていたギブスンではあるけど、ここにきて普っ通ーーなサスペンスを繰り出されると「結局今までのアクロバティックな作劇は技術不足から来るもので、やっとまっとうなエンタテインメントが書けるようになったってことかい?」とも思ってしまう。ギブスンの文体を楽しんできた私の20年間はなんだったんだ。
次に期待。もっと視点を。

とはいえ、機械式コンピュータモジュールがアンティークとして売買されている設定は燃えるものがあるし、街の描写だけでも充分楽しい。ネット上で自己表現する匿名の人物の正体が●●であるというオチは、古き良きサイバーパンクのロマンチックな王道で、懐かしさに涙が出ます。

主人公はブランドアレルギーを逆手にとって次のトレンドを予言することで生計を立てている人物。本人はロゴ恐怖症で身につけることができない。
と言う設定を家人に話したら
「……『香水』?」
あーっそっかー。ぐやじい。こんなとこからの引用かよ。

ギブスンは毎度毎度日本から意外なモチーフをピックアップするが、今回は「ビックル」と「こげぱん」。やられた。そうかービックルアメリカ人好きそうだよなあ。

*1:いっこもSFではないが