星のファンタジー

どういう企画なのか全然分からないが、見かけたので買ってみた。
アンソロジーで、収録は以下の通り。
ケシの咲く惑星(水樹和佳子)/午前6時の円盤(山田ミネコ)/昼さがりの精霊(花郁悠紀子)/夜の幻影(波津彬子)/花咲く星々のむれ(佐藤史生)


波津彬子以外は既読。


昔、少女漫画にはSFの系譜があったのだよねえ。
しかしこれは…「星のファンタジー」と言うよりは、「心の弱さアンソロジー」ではないですか? 登場人物達の懐かしい脆弱さ。心弱さこそが作者をここでないどこか=星へと向かわせているというか。
作中で弱さを克服する作品も、しない作品もあるけど、ひ弱さをダイレクトに表現して、生きづらさを感じている若い読者に訴えかける……これも少女漫画の一つのあり方だったよなあ。


いま登場人物が弱いマンガってないもんね。凄惨な過去でも持ってないと暗い性格は許されない。生きるだけでつらい、なんてのは甘えの名の下に一刀両断。現実にいたら迷惑なそういう人物を描くのもフィクションの重要な機能なのに。


まあ作家が飽きてしまうのもあるんだろうけど。ここに参加している作者で言えば、山田ミネコの「最終戦争シリーズ」も、最初は閉塞した社会生きる力のない人間達がおろおろする作品だったのだが、作者が自分の若書きに赤面したそうで*1、デーヴァダッタという敵を設定して明るい群像アクションに転換。気持ちは分かるが読者としては、初期の憂鬱なカンジを愛していたんだよなー。


今、そういう観点から楽しませてもらってるのは、ドラマも始まった『ホーリーランド』。DQNマンガの体裁をとりながら、ひ弱い主人公が心弱いまま暴力の才能を開花させたら……という大変少女漫画的な心理描写中心の作品です。古き良き少女漫画を愛する人はぜひご一読を。嘘だけど。

*1:文庫版のあとがきに詳しい。