夜は短し歩けよ乙女

夜は短し歩けよ乙女

夜は短し歩けよ乙女

角川は私にとっては敵であり、こやつらのために1年半の失業期間を被ったこともある。だからなるべく買わないようにしているのだが、つい投資してしまった。ちょうど舞台が京都で、春夏秋冬の章立てになっているという点で共通している書籍を入稿し終わったばかりと言うこともあったかもしれない。また、年末年始は京都で過ごすことになっていて、そこで読む本を探していたのも大きかった。
それより何より、トヨザキ社長信者なんだよね。


学力と出身地を無視して言わせてもらえば、あこがれの学歴といえは宮城一女→京大(理系)である。京大出身と言うだけでひれ伏すと言うか「あー、上品かつ無茶苦茶なキャンパスライフを送ってきた、頭脳明晰にしてウィットに富んだ方なんだろうな」と勝手なイメージを持つのだが、森見登美彦の本を読むとその印象がますます強化されますな。良いなあ良いなあ。もう最高。かわいーたのしー。ちっちゃくて酒豪で*1好奇心と義侠心を持ち合わせた勇気凛々瑠璃の色なヒロイン「黒髪の乙女」もかわゆらしいし、ただ飲みに命燃やす女傑「羽貫さん」もかっこよい。個人的には高潔なる魂と不潔きわまりない下半身を併せもつ「パンツ総番長」がタイプである。語り手の「先輩」が面白くもなんっともない人物であるのも、定石としてたいへん好ましい。


一方、それぞれの短編の舞台もすばらしい。
古本市の奥にある木陰のカフェコーナー、これ、私が持ってる夏の京都のイメージそのもの。夏の明るい通り雨が降り掛かってすてき。学園祭の京大キャンパスも魅力的。私は広大かつうろんな隅っこや怪しい実験施設がいっぱいあるキャンパスという舞台に大変弱いのだが、ツボど真ん中な設定でもうもう。感涙。
キャラと舞台、両方を兼ね備えた希有なファンタジー


このご本の唯一の瑕は短いと言うことですな。もう10篇くらい「先輩」には外堀を埋め続けて欲しかった。読み終わるのがもったいないといったらない。


ちなみに、京都でこれを読んでいる最中に松尾大社に行き、「樽うらない*2」で見事銅鑼を射抜いて特別のお守りをいただいた。小説といい初詣といい、こいつは春から縁起がいいやア*3。今年は良い酒になる!……などとちょーしこいていたら、今日まで休肝日がない私orz。

*1:どう読んでも一回生=18歳なんですが。

*2:なんでか松尾様のおみくじは全部「的当て」だった。

*3:ここで江戸っ子になりだいなしに…。