押山美知子『少女マンガジェンダー表象論』

今「リボンの騎士」について書くとアクセス数が上がるっぽいのでちょっと前に読んだ本について書いてみる。

リボンの騎士」「ベルサイユのバラ」「少女革命ウテナ」の3作品を中心に、少女マンガにおける「男装の少女」の「表象」について研究した本。あくまで表象…身体パーツの描き方や彩色、服装から「男装」=「性別越境」を論じて分かりやすい。

例えば眼についてなら、少女マンガの表現においては丸く、まつ毛に縁取られた、光の入った眼が女性性を表していると押山は説明する。サファイヤの場合は性自認が女性のときはまつ毛が描かれ、男性のときは描かれない。オスカルの場合は女性キャラと男性キャラの間の形の眼を与えられ、男女双方のくびきを逃れた「人間」として表現されている。ウテナの場合は完全な女性の眼を付与されているが、これはウテナの男装が勘違い、あるいは強がりであり、本来のウテナがあくまで隷属する性としての女性である事を表している。なるほど、眼の描き方一つをとってみても時代時代での性別越境のありかたが見えてきそうだ。

もともとは学術論文らしく、印象批評に陥らず資料に沿って展開される論理が明快。