搾取される若者たち―バイク便ライダーは見た!
搾取される若者たち ―バイク便ライダーは見た! (集英社新書)
- 作者: 阿部真大
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2006/10/17
- メディア: 新書
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うん、聞き込みの部分は面白い。筆者が「かっこいい」と思うバイクの車種がどんどん変わっていくのがリアル。坂を転がり落ちるようにワーカホリックになって行くのが読んでて面白い。そうかーバイク便ライダーって、マシンもガソリンも持ち出しなのね。とんでもない職場だな。
さてこの本の中で「あいつらいいもの食いやがって」なんて揶揄されている、バイク便ライダーを顎で使っている(ように見える)我々出版業界人ですが。我々も彼らと変わらないわけです。大手は別でしょうけど。残業代なし賞与なし休日出勤手当なし、かといって裁量労働制に伴う福利厚生を受けられるわけでなく。違うのは命の危険がないことくらいですか。もちろんそれは決定的な違いだけど。
編集は時給換算してはいけないと言うのが常識で、なんでかっていうと悲しくなるから。私の場合はマックのバイトに転職するか悩む程度の時給ですが、これはかなりいい方。いいのはお給料をたくさんもらってるからでなく、かなり努力して労働時間を押さえているから*2 *3。500-600円くらいの人がざらにいる。私はIT系から出版へドロップアウトしたわけですが、「IT系は新3K」なんてニュースを聞くだに大苦笑。ITとの比較において、出版は給料2/3労働時間1.5倍福利厚生1/100位の感覚。
でも概してみんなワーカホリック。仕事が好きですね。本や雑誌を作るのは基本楽しい事なんですかね。
とまあ、なんだか奴隷の足鎖自慢になってしまったが、やりがい搾取の現場にいる者からみるとこの本の結論はかなりしょうもない。「協力して立ち上がろう」と言うのではなあ。ナイーブすぎる。博士課程在学中の若者が書いた本でこの出来と言うのはかなりすごい事だと思うが、それは読者には関係ないし。
「協力して立ち上がろう」の問題点は二つで、一つには今立ち上がって報われるしくみがないでしょ。もう一つはそれ以前に、本文で活写しているように「体を壊すまで自分が搾取されている事にきづかない」わけだから。立ち上がりようがない。
しかし、若者と言えばニートと指示待ちしかいないと思われていた2006年の状況で、仕事を愛するあまり企業に都合がいいだけの労働者に成り下がって行く若者像を提示できたそのことだけで、本書には充分意義があるとは思います。