夢幻紳士 回帰篇

夢幻紳士 回帰篇

夢幻紳士 回帰篇

最終回にどんでん返しがあるかと思ってミステリマガジンを読まないようにしていたのだが、うーんこれは怪奇編のセルフパロディの域を脱してないのかな。怪奇編の頃の高橋葉介の絵は「下ぶくれ肥満体」とか悪評フンプンなのだが、本人も納得いってないのかねえ。

「吸血鬼」は改悪じゃないかなあ。「玉」とかあほらしいけど、最後の数コマで「姉と混同してはいるけど妹のことも本当に好き。だけど世界が違うのであえて残酷に突き放す、でも役得はちゃっかりいただく」という複雑な魔実也の心情を表している怪奇編の方が優れている。絵もこの部分だけみれば元の方が良い。絵柄の美しさとマンガ表現として活きるかはまた別なのか。

「蜘蛛」は回帰篇の方が整合性は獲れているが、魔実也が第2の蜘蛛の誕生に関わってないのがなあ。主人公マンセーはいかがなものか。怪奇編の魔実也は子供にもヒドいことをしていた。

「幽霊船」のアレンジは良いと思う。

個人的には「老夫婦」「幽霊夫人」「サトリ」がないのが残念。だが今回のラインナップに載らなかったのは理解できる。この3作って心身ともに魔実也が生身に近い。今の絵で表現できないんだろう。

元作品も2年前文庫化されたばっかりで、比較して読むことができる。

夢幻紳士 (怪奇篇) (ハヤカワコミック文庫 (JA889))

夢幻紳士 (怪奇篇) (ハヤカワコミック文庫 (JA889))

ちなみに文庫版は「怪奇篇」だが、初出では「怪奇編」である。手元の「メディウム」を確認しているので間違いない(え)