私の男

私の男

私の男

桜庭一樹はタイトルに惹かれて「少女七竈と七人の可愛そうな大人」を読んだが、主人公が性愛から守られた構造になっていておいおいそりゃねえだろ、と。その点こちらはなかなかいいのではないか。主人公と遠縁の義父、二人のどろどろの関係をそのまま描いたらよくある話にすぎないが、時系列を逆にたどる構成がうまく効いているし、周囲に非常に健全な人物(全員ヒドい目に遭ってるが)を配置することで二人の有り方が立体的に浮かび上がる。舞台の暗くてさえざえとした北の海&足立区(!)もいい。