新宿駅最後の小さなお店ベルク 個人店が生き残るには?

うーん。私はベルクのファンだから面白いんだけど、ベルクに行ったことのない人にとってこの本どうなんだろう? どんな店かも分からないのでは。店長が書いても要領を得ないんだから、本当にベルクってのは不思議な店だ。

ベルクのコーヒーはマシンで出しているのに奇跡のおいしさ!*1と思っていたのだが、この本を読んで分かった。奇跡なんじゃなくてもの凄くマシンの調整にこだわってるからなのだ。ここまでやるならいっそ手作業で出せば? とも思うくらいだ。人件費って高いよね。あらためて。
しかも、フードの原価率40%とは! どうりで美味しくて安いという実感があるわけだ。お得だ。
でもベルクの成功の鍵ってのは、この本に書いてあるようなフードやドリンク、店構えの工夫が直接の要因ではないと思う。この本をビジネス書として読む人は、そこを真似してもしょうがない。これらの要素は結局1つの戦略のあらわれであって、それは、

客が自主的に回転率を上げる!!

このためなのだ。
ベルク側が「早く帰れ」と明言しているわけではないのだが(そんな店お断りだ!)、キツキツの席、お得なフードと珈琲とビール、キャッシュオンデリバリー形式、通路と一体化した造り、客の質を褒め称えるチラシ*2や相席を勧めるPOPなどから、こちらは「長居するのは野暮である」「さっさと退散して待っている他のお客さん=ベルク仲間(!!)の場所を作ってあげよう」「こんな狭い店でここまでやってくれてるんだから、儲けさせてあげないと」とつい思ってしまうのだ。そのカラクリが見えても、べつに萎えないな。210円15分で、これだけ味覚と自尊心を満足させてくれる店は他にないもの。

*1:もちろん手でドリップしているところと比べるべくもないが、210円だからね

*2:井野さんは本当に客をおだてるのがうまい。それはこの本の内容も同様。