ジム・トンプスンの主人公はスイーツ(笑)

トンプスンはとにかく主人公の性格が独特で、評価されている後半の破滅・狂気へのカタストロフもこの性格あってこそ。
以前はジム・トンプスンの主人公像を「2chのA型コピペのような性格」と言っていた(以下改変コピペ。赤字のとこしか変えていません。)。

トンプスンの主人公の一般的な特徴>(見せかけのもっともらしさ(偽善)に騙されるな!!)
●とにかく神経質で気が小さい、了見が狭い(臆病、二言目には「世間」
(「世間」と言っても、アメリカの田舎町を中心とした一部の人間の動向に過ぎない))
●他人に異常に干渉して自分たちのシキタリを押し付け、それから少しでも外れる奴に対しては好戦的でファイト満々な態度をとり、かなりキモイ
(自己中心、硬直的でデリカシーがない)
●妙に気位が高く、自分が馬鹿にされるとカッと怒るくせに平気で他人を馬鹿にしようとする
(ただし、相手を表面的・形式的にしか判断できず(早合点・誤解の名人)、実際にはたいてい、内面的・実質的に負けていることが多い)
●権力・強者には平身低頭だが、弱者に対しては八つ当たり等していじめる
(強い者にはへつらい、弱い者に対してはいじめる)
●あら探しだけは名人級でウザく、とにかく否定的
(例え10の長所があっても褒めることをせず、たった1つの短所を見つけては貶す)
●基本的に悲観主義でマイナス思考に支配されているため性格が鬱陶しい(根暗)
●少数派の異質・異文化を理解しようとせず、あるいは理解を示さず、排斥する
(差別主義者、狭量、視野が狭い、多数派=正しい と信じて疑わない)
●集団によるいじめのリーダーとなり皆を先導する(陰湿かつ陰険で狡猾)
●他人の悪口・陰口を好むと同時に、自分は他人からどう見られているか、人の目を異常に気にする
(自分がそうだから容易に他人を信用できない、ポーズだけで中身を伴っていない、世間体命)
●自分の感情をうまく表現できず、コミュニケーション能力に乏しい
(同じことをレコードの再生のように何度も言って変)
●たとえ友達が多い奴でも、いずれも浅い付き合いでしかなく、心の友達はおらず孤独
(心の感度が低く、包容力がなく、冷酷だから)
●頭が硬く融通が利かないためストレスを溜め込みやすく、また短気で、地雷持ちが多い(不合理な馬鹿)
●たとえ後で自分の誤りに気づいても、素直に謝れず強引に筋を通し、こじつけの言い訳ばかりする
(もう腹を切るしかない!)
●男は、女々しいあるいは女の腐ったみたいな考えのやつが多い
(例:「俺のほうが男前やのに、なんでや!(あの野郎の足を引っ張ってやる!!)」)

変わってる。こんな性格の人物他の小説であまり見ない。こんなクズなのになんだか魅力があって、小説の最後まで付き合ってしまう。

ところが今回、「この世界、そして花火」を読んで「へえ」と思ったんだが、主人公の双子の妹はごくごく普通の、凡庸と言っていいあばずれなのだった。で、この妹、主人公と全く同じ性格なのだ。同じ性格設定なのに、女だと凡庸なキャラクターに、男だと超個性的に見えるわけ。
つまり、トンプスンの主人公って、女なのだ。セクシャリティーはへテロだし、アメリカ的マッチョイズムに迎合しているのだが(それも演技だが)、とっている戦略と目的が女。

  • 自分が前に立たず、他の人物の成功を支えたり、おこぼれを狙ったり。
  • とにかく生意気に見られると人生終了と考えており、バカの振りをする。
  • 暴力は嫌い(実行できているかはともかく)。口先でごまかす方がよいと考えている。
  • 外見を洗練させることにこだわる。ファッションと身だしなみはマナーのためでなく、あくまで3行前の戦術のため。
  • そこまでやっておいて、欲しいのは小金と安定。
  • 非常時にパニクる。

というわけで、トンプスンの主人公はスイーツ(笑)だったんだよー。ナ、ナンダッテry)
「失われた男」はさほど重要ではないと思ってたが、実は非常に象徴的な作品なのかも。
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私が特に好きなのは(初めて読んだということもあって)「ポップ1280」。上記に加えて、主人公は自分を天使だと考えている。ますますスイーツ(笑)
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